大きな声を出して歌うのは気持ちいいから好き。
 それが歌詞のわからない歌でも、わくわくして歌いだしたくなるような曲ってあるじゃない?
 そういうの、ルーとかラーとか適当に歌っちゃうのをオープンハミングというらしい。
 または「ヴォカリーズ」ってフランス語でカッコ良く。

 秀一郎に抱き締められるのは気持ちいいから好き。
 なんか照れ臭くってエヘヘとか笑っちゃうときもあるけど、大体は「ふふん」って感じで満足で幸せ。
 そういうのは「ハグ」って軽めに言う? それとも「抱擁」なんて難しめに?

 秀一郎にだっこされてると気持ち良くて幸せ。
 そう言ったら、秀一郎は「英二らしい」って笑った。
 変なの。
 好きな奴に抱かれてるときに幸せで気持ちいいのなんて皆一緒だと思うのに。どうして俺らしい?
 そう言ったら、秀一郎は曖昧に笑った。
 それからちょっと考える。
 俺は、力を込めて秀一郎の頬をむぎゅーと両側に引っぱる。
「イタッ、痛いって英二」
 秀一郎はいつも難しく考えすぎなんだって!
 そんな必ず言葉で説明しようとしなくたってさ、歌詞の知らない歌だってヴォカリーズで歌っちゃえるように、“何となく”で済ませてもいいじゃん。

「うん…、でも俺は…ちゃんと伝えたいから」
 もちろん言葉ですべてが通じるなんて思っていないけれど、できるだけ自分の言葉で。自分の想いを伝えたいと思うから。
「誤解させたくないしね」

 ああ、もう。秀一郎のバカ。
 そんなのとっくにわかってるってば。

 そんでもって俺も馬鹿。
 “そんなの”って何だよ。秀一郎の何をわかってるって?
 けど、うまい言葉は浮かばない。
 仕方ないから、俺はまた秀一郎の首にぎゅーっと抱きつく。
 大好きだーとか、そんな感じの意味。のつもり。あと、キスしろーとか。

 通じる自信は実は結構あったんだけど、秀一郎が俺の背中にそっと手を回してくれて、膝の上に乗っかったままの俺の耳元に口を寄せて、
「もう少し離れないとキスできないだろ」
 って言ったときは本当に嬉しかった。




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一応、大菊。………のつもり(滝汗)。

(2005.1.26.)